【Godot】Godotプロジェクトを各プラットフォームへビルドする

作成: 2025-12-10最終更新: 2025-12-16

GodotプロジェクトをWindows/macOS/Android/Webへ確実にエクスポートするための全手順。ビルドサイズ最適化、よくあるエラー解決、ベストプラクティスまで網羅。

概要

Godot Engineでゲーム開発の大部分を終え、いよいよプレイヤーに届けようとした瞬間、多くの開発者が予期せぬ壁にぶつかります。「エディタ上では完璧に動いたのに、エクスポートしたら動かない」「特定のプラットフォームでだけエラーが出る」。

この記事では、GodotプロジェクトをWindows、macOS、Web、Androidへ確実にエクスポートするための設定手順と、初心者が陥りがちなつまずきポイントを解説します。


Godotエクスポートの基本概念

エクスポートテンプレート

Godotプロジェクトを特定のプラットフォームで実行可能な形式にするには、エクスポートテンプレートが必要です。これは、Godotエンジン本体を各プラットフォーム向けにコンパイルしたバイナリファイル群です。

  • バージョンの一致が必須: Godotのバージョンとテンプレートのバージョンは完全に一致する必要があります
  • デバッグ版とリリース版: テンプレートには両方が含まれており、エクスポート時に選択します

PCKファイル

プロジェクトのシーン、スクリプト、アセットはPCKファイルにまとめられます。

PCKファイルの扱いメリットデメリット主な用途
分離(デフォルト)実行ファイルが小さい、パッチ配布が容易配布ファイルが複数PC
埋め込み単一ファイルで配布可能実行ファイルが大きくなるWeb, モバイル

よくある間違いとベストプラクティス

カテゴリよくある間違いベストプラクティス
ファイルパス大文字・小文字を混在させているすべてのファイル名を小文字とスネークケースに統一する
外部ツールAndroid SDK/JDKのパスが間違っているGodotの要求バージョンを確認し、正確なパスを設定する
リソース管理不要なアセットがプロジェクトに残っているエクスポートプリセットでファイルを選択・除外する
シェーダー起動時にカクつくシェーダーのプリコンパイルを有効にする

ケースセンシティブの問題

Windowsで開発しているユーザーが最も陥りやすいエラーです。

Windowsのファイルシステムは大文字・小文字を区別しませんが、LinuxやAndroidは厳密に区別します。res://Assets/Player.pngと記述しているが、実際のファイル名がres://assets/player.pngである場合、エクスポート後に読み込みに失敗します。


プラットフォーム別設定

Windows / macOS / Linux

デスクトップ向けのエクスポートは最もシンプルです。

  • アイコンとバージョン情報: rcedit(Windows)を使い、アプリケーションのアイコンを設定できます
  • macOSの公証: 配布する場合、Appleによる公証が必要になることがあります

Android

Androidは設定項目が多く最も複雑です。

  1. SDK/JDKの設定: 「エディタ設定」→「エクスポート」→「Android」でパスを設定
    • Godot 4.x: JDK 17または21が推奨
    • Godot 3.x: JDK 11が推奨
  2. AAB vs APK: Google PlayストアはAAB形式を推奨。エクスポート設定で切り替え可能
  3. パーミッション: 必要に応じてAndroidManifest.xmlで設定

よくあるエラー

  • No Android SDK found … Android SDK Pathが未設定
  • apksigner not found … build-toolsがインストールされていない

Web

Webビルドは手軽ですが、サーバー環境に依存する問題があります。

SharedArrayBuffer問題の解決(Godot 4.x、スレッド有効時):

Godot 4.xでスレッド機能(マルチスレッドレンダリングなど)を有効にしてエクスポートする場合、ブラウザのSharedArrayBufferが必要になります。これにはサーバー側で以下のHTTPヘッダーを設定する必要があります:

Cross-Origin-Opener-Policy: same-origin
Cross-Origin-Embedder-Policy: require-corp
  • itch.io: チェックボックス一つで有効化可能
  • 自前のサーバー: 上記HTTPヘッダーを設定ファイルに追加

スレッドを無効にする選択肢: エクスポート設定で「Thread Support」を無効にすれば、これらのヘッダーなしでも動作します。ただし、パフォーマンスに影響する場合があります。


ビルドサイズの最適化

手法具体的なアクション効果
リソースのフィルタリング「リソース」タブで必要なファイルだけを指定
テクスチャ圧縮.importでVRAM圧縮を設定
オーディオ品質の調整ビットレートを下げる

エクスポート前の最終チェックリスト

チェック項目詳細
ケースセンシティブリソースパスが実際のファイル名と一致しているか
外部ツールのパスAndroid SDK、JDK、rceditのパスが正しいか
デバッグの無効化リリースビルドで「デバッグを有効にする」がOFFか
メインシーン起動シーンが正しく設定されているか

まとめ

Godotのエクスポートは、プラットフォームごとの特性を理解した上で行うべき設定作業です。

特に重要なポイント:

  • ケースセンシティブの問題: ファイル名は小文字で統一
  • 外部ツールのパス設定: Android SDK/JDKは正確に設定
  • プラットフォーム固有の要件: Webのヘッダー設定など

エクスポートが成功したら、各プラットフォームのストアへの申請と配布に挑戦しましょう。