【Unreal Engine】Blueprintグラフを整理する10のテクニック

作成: 2025-12-12

Blueprintが複雑になると読みづらくなりがち。関数化・マクロ化、Rerouteノード、コメントボックス、命名規則など、グラフを整理して可読性を保つためのテクニックを紹介。

Unreal Engine(UE)でのゲーム開発において、Blueprintは非常に強力なツールです。コードを書かずに視覚的にロジックを構築できるため、初心者でも直感的に開発を進められます。しかし、プロジェクトが大規模になるにつれて、Blueprintのグラフが複雑化し、「スパゲッティコード」と呼ばれる状態に陥ってしまうことは少なくありません。

ノードが絡み合い、接続線が画面を縦横無尽に走り、数ヶ月前の自分自身が書いたロジックすら理解できない...。そんな経験はありませんか?

本記事では、Unreal Engine初心者から中級者の方を対象に、Blueprintの可読性を劇的に向上させ、将来の自分やチームメンバーがスムーズに作業できる環境を作るための実践的な整理・可読性向上テクニック を徹底的に解説します。


スパゲッティコードの原因

Blueprintがスパゲッティコードになりやすい主な原因は、その自由度の高さにあります。

  1. 実行ピンの接続が自由すぎる: どこからでもノードを接続できるため、処理の流れがすぐに複雑な網目状になってしまいます。
  2. 安易なコピペによる重複: 似たような処理を関数化せずにコピペすることで、修正が必要な箇所が複数に増え、管理が困難になります。
  3. 大規模化への対応不足: 小さなロジックの積み重ねで始まったグラフが、機能追加のたびに肥大化し、一つのイベントグラフに全てが詰め込まれてしまいます。

これらの問題を解決するには、C++のプログラミングにおける「関数」「クラス」「命名規則」といった概念をBlueprintにも適用し、意識的に整理することが重要です。

ロジック整理の基本テクニック

2.1. 関数化とマクロの活用(再利用性の向上)

最も重要な整理術は、ロジックを適切な単位で分割し、再利用可能にすることです。

分割方法主な用途特徴
関数 (Function)純粋な処理、戻り値が必要なロジック、再利用性の高い処理実行ピンがない「純粋関数」も作成可能。ローカル変数が使える。
マクロ (Macro)複雑なフロー制御、実行ピンを伴うノードのグループ化実行ピンを持つ。入力/出力ピンを自由に定義でき、ノードのテンプレートとして機能する。

ベストプラクティス:

  • 関数: 「プレイヤーのHPを計算する」「特定のアイテムを検索する」など、結果を返す ロジックや、実行ピンを必要としない ロジックに使用します。
  • マクロ: DoOnceBranchなど、実行フローを制御する ノードを複数含み、それを一つのブロックとしてまとめたい場合に使用します。

2.2. コメントボックスとノードのグループ化

視覚的な整理は、ロジックの理解を助けます。

  • コメントボックス: 関連するノード群を囲み、その処理の目的 を明確に記述します。単に「ダメージ処理」ではなく、「敵の攻撃力と防御力を考慮した最終ダメージ計算」のように、具体的な目的を書くことが重要です
  • ノードの整列機能: ノードを選択し、右クリック→「Alignment」メニューから整列方法を選択します。また、Shift+W(上揃え)、Shift+S(下揃え)、Shift+A(左揃え)、Shift+D(右揃え)のショートカットキーも利用できます。これを習慣化するだけで、グラフの見た目は劇的に改善します。

2.3. 変数の命名規則の徹底

変数の命名は、その変数が何を表しているかを一目で理解するために不可欠です。

命名規則の一例(ハンガリアン記法に近いスタイル):

変数の型接頭辞
Boolean (真偽値)bbIsJumping, bCanAttack
Integer (整数)iiMaxAmmo, iScore
Float (浮動小数点数)ffMovementSpeed, fCurrentHealth
Vector (ベクトル)vvTargetLocation, vSpawnDirection
String (文字列)ssPlayerName, sDebugMessage

💡 命名規則について

上記はあくまで一例です。Epic Gamesの公式コーディング規約では、Booleanのbプレフィックスのみが推奨されており、他の型に接頭辞を付けることは必須ではありません。最も重要なのは、チーム内で命名規則を統一し、一貫性を保つこと です。どの規則を採用するかよりも、プロジェクト全体で同じルールを守ることが可読性向上に繋がります。


ノード配置と接続の整理

接続線(ワイヤー)の整理は、スパゲッティコード対策の核心です。

3.1. Rerouteノード(リルートノード)の活用

Rerouteノードは、接続線を曲げたり、分岐させたりする際に非常に役立ちます。

  • 接続線の交差を減らす: 複雑なデータ線が他のノードや実行ピンと交差するのを防ぎます。
  • 視覚的な整理: Ctrlキーを押しながらワイヤーをダブルクリックすることで簡単に作成できます。これにより、ワイヤーを直線的に保ち、グラフ全体をすっきりさせることができます。

3.2. 一方向の流れを意識する

ロジックの流れは、常に左から右、そして上から下 の一方向に保つようにします。

  • 実行ピン: 左から右へ流れるように配置します。
  • データピン: データが左側のノードから右側のノードへ流れるように配置します。

これにより、初めてグラフを見る人でも、視線の移動がスムーズになり、処理の開始から終了までを容易に追跡できます。

3.3. ローカル変数の活用

一時的な計算結果や、複数のノードで参照されるが、外部に公開する必要のない値は、ローカル変数 として関数やマクロ内で宣言します。

  • メリット: グラフの入力ピンや出力ピンを減らし、接続線をシンプルに保てます。また、変数のスコープが限定されるため、意図しない場所での値の変更を防げます。

よくある間違いと改善例

よくある間違い改善のためのテクニック
巨大なイベントグラフEvent TickEvent BeginPlayに全てのロジックを詰め込む。
ワイヤーの交差接続線がノードの上を縦横無尽に走り、処理の流れが見えない。
不適切な変数名Temp1, A, NewVarなど、意味不明な変数名を使う。
マジックナンバー3.14159500.0などの定数を直接ノードに入力する。

整理の3つのポイント

Blueprintのスパゲッティコードを防ぐための鍵は、「分割」「命名」「視覚的整理」 の3点に集約されます。

  1. 分割: 関数とマクロを使い分け、ロジックを再利用可能な小さな単位に分割する。
  2. 命名: 適切な命名規則(特に接頭辞)を用いて、変数や関数の役割を明確にする。
  3. 視覚的整理: コメントボックス、ノードの整列、Rerouteノードを活用し、処理の流れを左から右の一方向に保つ。

これらのテクニックを意識して日々の開発に取り組むことで、あなたのBlueprintグラフは劇的に読みやすく、メンテナンスしやすいものに変わるでしょう。高品質なコードは、開発速度とチームの生産性を向上させる最も確実な方法です。